「あれ、サタナキアさん。ピアスどうしたんですか?」
ふと気が付いた。
サタナキアは今迄金のピアスを付けていた筈だが、二つともいつの間にか無くなっている。
一つ使った(使ったとはどういうことなのだろう)というのは聞いていたけれど、遂に二個目も無くしたのだろうか。
彼は服装に無頓着な風に見えて、意外にも普段からアクセサリーの類を身に付けていた。
トルモットはそれらが何かの実験器具なのかとも疑っていたのだが、予想に反して普通にオシャレの一環だったため、酷く驚いた記憶がある。
「ああ…これね。この前プラチナのピアスと交換したから、外してたんだよ。片方だけ付けているのも不自然だろ」
「えっ、交換!?どなたとですか!?」
「さあ?ステン領に住んでるヴィータじゃないのかな」
適当な言い草にナマエは困惑する。
サタナキアが好んで付けているピアスを渡すくらいなのだから、気に入った相手だったのかと思ったが…そうでもないらしい。
では利用価値でもあったのか?と考え、すぐに結論は出た。
概ね、ステン領の調査に使ったなどだろう。
浮世離れした色白の帽子男がピアスを交換してくれなどと言って来たら、町の若い娘などは応じるかも知れない。サタナキアは美青年ではあるので。
まあ、ナマエならば間違いなく断るのだけれど。
初対面の相手とピアスの共有とか、相手が無茶苦茶に好みの男性であっても嫌だ。
対象がかなり好意的に思っている相手で、例えばそれがアンドレアルフスみたいな…ナマエのストライクゾーンのド真ん中を抉り取ってくる、頑固で不器用なタイプだけど誠実さが見える可愛い男性なら、多分悩んだ末に交換に応じると思うのだが。
サタナキアの系列の顔に言われたら、怖いので「え…いやです…」と即答すると思う。
…ナマエは自分で考えて気が付いて無かったが、サタナキアは好みのタイプのドンピシャであった。上記の属性に加えて、素直でいじらしいところがある。
引き合いに出される当のアンドレアルフスなんかは、鈍いヤツだなと呆れているのであった。
「何か失礼なことを思ってない?」
「そんなことないですよ。初対面で胡散臭そうな男性からよくピアス貰えるなって思っただけです」
「お前ね…」
呆れた顔でサタナキアはこちらを見たが、彼も相手がちょっとおかしいとは思っていたらしい。
観察対象外には淡白な対応をする男なので、思い返してみると…と言った風な反応ではあるが。
思案する横顔は、やはり少し寂しく映る。よく似合っていたので尚更のことだった。
「勿体無く感じますね」
ナマエの率直な感想に、サタナキアは「なんで?」と怪訝そうに聞いた。
疑問を飛ばす時、彼は真顔のことが多いのだが、今回は本当に不可解そうな顔をしている。彼にとって、ナマエの感情は理解し難いことが多いとは本人談だ。
「素敵でしたから。見慣れたものが無いと寂しいものがあります。勿論、無ければダメとか、パッとしないとか、そういう訳ではないんですけど」
「へえ、そういうものかい?…と、言いたいところだけど、それは俺にも理解出来るよ。普段から身に付けることが日常になっている物は、無いと居心地が悪かったりするからね」
サタナキアは長い耳に触れる動作をした。アァ、とナマエは納得する。
そういえば彼は考えに行き詰まった時、たまに耳を触ったりしていたかもしれない。
指の先に当たる金属の冷たさは、少しの閃きを齎してくれることもある…のかも。
一人で自己完結していれば、徐にサタナキアがハイドンを持ち上げた。彼は外出する際、必ずハイドンを持ち歩いている。
外出するつもりなのだろうか。
周りのメギドたちからは、サタナキアとナマエはプルフラスも併せて常につるんでる三人セットの扱いを受けることが多い。
しかし基本的にサタナキアとナマエは集団行動を取らず、またナマエはサタナキアの研究室に入り浸っている訳では無い。
人手が必要な時に一方的な呼び出しを受けているだけである。
以前までプルフラスとサタナキアは殆ど一緒に居たのだが、仮面事件の以降はそんなことも無くなったし。
そうなるとプルフラスの世話を焼きに、あとついでにサタナキアの食生活を見守るために通っていたナマエの足も自然と遠退く。
牡蠣の養殖にハマってからのサタナキアは結構まともな食事をしているし、心配する要素は殆ど無くなったのだ。
だから今回も、彼が出掛けようがナマエには関係ないつもりだったので、「行ってらっしゃ〜い」と気軽に声を掛けたのだが。
「お前も来る?」
ナマエは頭の回転が速いと自負しているが、一瞬なにを言われているか理解出来なくて硬直した。オマエモクル?
辛うじて出掛けることは理解に及んだので、動揺を隠しつつ、ついでに「何故?」という疑問を伏せつつ尋ねる。
「ええっと…何処にですか?」
「王都だけど」
なんで?というのが率直な感想だ。サタナキアがナマエを外出に誘うなんて、一体どういう風の吹き回しだろう。
以前、無人島に誘われたことはあったし、その時はちゃんと「調査に行くから着いて来て」と言っていた。
しかし今回は、「お前も来る?」だ。
仮面の時も、無人島の時も、ナマエに選択肢は無かった。
此方に選択を委ねられるような、彼の采配とは関係の無いところで意見を求められるような、意思を尊重されるような場面は今まで一切合切なかったので、ナマエは非常に困惑する。
こちらの動揺が見て取れたらしいサタナキアは「別に深い理由は無いよ。散歩みたいなものさ」と加えて言った。
余計にらしくなさを強調させるのは止めて欲しい。思惑も何も無く、彼がそのような提言をするのは不可解だ。
「行ってくればいいんじゃないか?そいつは普段、ナマエを雑に働かせてるんだ。食べ物の一つや二つや三つ、強請って来たらいいよ」
そう言いながら入って来たのはプルフラスである。
以前の彼女なら「何か企んでるのか!」とか言いそうなところだったが、此方も随分らしくない。
ただ、サタナキアのらしくない発言よりは、プルフラスの方が手放しで信用出来るのも確かだったので、ナマエは素直に頷いた。
サタナキアが「まあいいけど…」とやや文句のありそうな顔でぼやきを溢す。
突然ナマエに物を買うことになって不服そうだと思えば、プルフラスが「あ!言っておくけど」と遮る。
「コイツが不機嫌そうなのは、ナマエに物を買うことになったからじゃないからね。
自分じゃなくて僕の言うことを聞いたから、サタナキアは嫌な顔をしてるんだよ」
サタナキアは多分、プルフラスが言わずとも最初から労う気だっただろう。
それを外部から言われて、据わりの悪さを誤魔化す為に不機嫌な顔をしているのもある。
それがプルフラスの見解だったが、ナマエは「あはは、そういうことにしておきます」と軽く笑った。
基本的にプルフラスのナマエへの気遣いは、サタナキアの都合の良い方の解釈に転ぶ。ナマエの自己肯定感が低過ぎて、サタナキアが彼女が思う以上にナマエを贔屓しているという発想に至らないからだ。
プルフラスはやっぱりサタナキアが気に食わないし、ナマエが良いように使われ続けてるのもムカムカする。
ムカつくのは事実なのだが、最近サタナキアがサタナキアなりにすご〜くナマエを大事にしてるのはよく理解出来たので、まあいいか!という気持ちである。
これがサタナキアの保身の為なら気に食わないけれど、そういう男じゃないというのはプルフラスもよく分かっているし。
以前からやや贔屓してるのは分かっていた事だが、周りや本人に上手く隠そうとしているだけで彼は本当にナマエを大事にしている。
基本的にナマエが死亡や大怪我をするリスクが無い場所、有ったとしてもサタナキアがその場に居て対処出来る場合にしかナマエは連れて来られないし派遣されないというのを先日の仮面事件で気が付いた。
少しでも懸念材料があると、ナマエは研究室の掃除を頼まれているというのも。本人は認めないだろうし、ナマエは気が付いて居ないが。
まあつまり、仮面事件はナマエに危機が及ばない前提で派遣されたというのに、ああなってしまった訳だ。
ナマエは別の件でキレていたので一ミリも気が付いていないが、ナマエを采配ミスで殺し掛けたサタナキアの方もかなり苛立って居たのである。丁度同じ期間くらい。
それは、サタナキアのこともナマエのこともよく観察しているプルフラスにしか知り得ないことだった。
ドライなように見えて、存外ウェットな関係なのであったのだ。この二人は。
「行ってらっしゃい。僕にお土産とかは良いからね!」
プルフラスが笑顔で手を振れば、サタナキアは溜息を、ナマエは「はあい」と微笑みながら返事をした。
ナマエには存分に羽根を伸ばして欲しいという意図があっての発言だったが、この様子だと彼女はお土産を選んできてしまうだろう。ナマエは優しくて気遣いが出来る素敵な女性だったが、サタナキアやプルフラスの気遣いに全く気が付かない鈍いところがある。サタナキア、お前のせいだぞ!
▽
「げえ、シーヌ…!」
出先でバッタリ出会うのは、会いたい人であるとは限らない。
サタナキアに連れられて市場を回っていたナマエは、見知った顔に袖を引かれ、カエルが潰れたような奇声を上げてしまった。
「ちょっとちょっと…!ナマエ、なんで貴方があんな素敵な男性と居るのよ…!」
解放される際に記憶処理を施されたらしい(というか、あの甘い香りは認識障害を起こすのだそうだ。
元からナマエは耐性があったのだとサタナキアから聞いた)彼女たちは、サタナキアのことを忘れているのだが、シーヌは相変わらずイケメンが好きだ。
なのでこうやって詰め寄られるのも予想の範囲内なのだが、いざそうなると面倒臭さが勝る。
「紹介してよ…!恋人では無いでしょ?そうよね?」
サタナキアはナマエが絡まれているのに気が付いているが、相手が実験対象であったことも察しているらしい。
面倒くさがって距離を詰めてこない。それはそれでいいというか、それがいいのだが、早くシーヌを撒かないとサタナキアが干渉してくる予感がする。
「ええっと、その〜、なんと言いますか。紹介はちょっと、出来ないっていうか…」
こんな温い断りで引くような女ではない。シーヌはスーパー肉食系だ。
どうして?どうして?とナマエを揺さぶる。
「別に付き合ってるとか、ルームシェアしてるとかじゃないんでしょ!?それなら…!」
「同じ家に住んでいるけど…それがどうかした?」
会話が終わるのを待てなかったらしいサタナキアが介入する。
その情報を開示されるとは思わず、ナマエはギョッとしてサタナキアを見た。しかし彼は澄ました態度であり、動揺しているのはナマエとシーヌだけである。
「は、ハア!?ナマエと!?」
「そうだけど」
「いつから!?」
「丁度一年半前くらいだったかな」
「そ、そんなに長く!?そんな気配なか…まさか、ナマエが髪を脱色してイメチェンしたタイミング!?うそ…あれは彼氏の趣味に合わせてたってこと!?」
「まあそんな感じかな」
サタナキアの適当な返答に、ナマエは苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。
サタナキアがナマエと同じ家に住んでいるというのは、アジトに部屋があるから実質同居!みたいな話ではなく、ふつうに言葉通りの意味である。
彼はアジトに自室兼研究室を与えられて居るのだが、それをまだ持たない、こっそり隠れて研究をしていた頃。
プルフラスの過干渉でイライラしていたサタナキアは、あろうことかナマエの借りてるアパートに退避しに来たのである。
ナマエはアジトのポータルから近くも遠くも無い、絶妙な位置に建っている賃貸に住んでいるのだ。
それを知っていたサタナキアは、プルフラスを撒くというただ一つの目的のためだけに本拠を人の家に移した。
襲撃事件の事もあって、アジトと王都を往復して周囲を観察したい意図もあるそうだが、前者の理由が九割だろう。
プルフラスもナマエの家に踏み込んでまではサタナキアを監視しようと思わないらしい。
しかしお陰様で、正面ドアから入ったサタナキアが裏口から出る姿が近所の人に目撃されまくっている。
よく果物を分けてくれる隣の家の男に「恋人、居たんですか…?」と詰め寄られたこともある。
ナマエは生物学が恋人だが、結婚出来ないのは困るのでサタナキアの存在は非常に迷惑と言えた。
まあ本拠を移したと言っても、基本的に研究が終わるまでは研究室にずっと居るわけだし、アジト滞在時間の方が圧倒的に長いが。
ナマエもナマエで学園や研究室で同じような篭り方をしているので、サタナキアと家で会うことはほぼ無い。
研究室を与えられた今、ぶっちゃけもうアパートに立ち寄る必要は無いのだが、日々のルーチンワークと化した通勤は脳にリフレッシュを与えるのだそうだ。
たまに寝に帰る、荷物置きというのが互いにとってのナマエの家だった。
信じられないと言った目でシーヌがナマエを見る。
この同門の女は別に悪い奴では無いのだが、良くも悪くも感情表現がストレートである。
「アンタ、こんな良い男居るのに家に帰らず研究室に篭ってた訳…!?」
「そういう訳では…」
「この男性が居るのに、研究が恋人で〜す!みたいな顔してたの?周りの男たちに思わせぶりな態度して?」
「そんなつもりは…」
「私だってね、アンタが家で男待たせてるなら手伝いとか頼まないわよ!早く家帰りなさいよ!」
シーヌがナマエの背中を叩く。痛みにちょっと涙目になれば、サタナキアがナマエを引き寄せた。
突然の彼氏ムーブに驚いたが、そういう意図じゃないだろうなというのはすぐに察せたので、ジト目で彼を見上げる。
「俺の代わりに言ってくれるかな。ナマエにそういうアプローチをしても無意味だよって」
サタナキアの長い指がナマエの手を絡め取った。指の間に指が差し込まれ、これ見よがしに掲げられる。
よくヴィータの恋人文化を知っていたなとナマエは変なところで感心する。
シーヌは黄色い悲鳴を小さく上げると、ナマエを微笑ましい目で見た。この女は基本的に根が善良ではあるのだ。
「はい、はい、それはもう!頼まれなくても言う気ですから!ナマエのこと宜しくお願いします!じゃ、私邪魔みたいなので帰りますね!」
「え、ちょ、シーヌ!余計なことはやめてくださいね!?」
嵐のような速さでシーヌは消えた。
ナマエは絡まった指を乱暴に握って、サタナキアを呆れた目で見る。
「サタナキアさん…」
「嘘は言ってないよ。俺が家に荷物を置いているのも、お前がオスのヴィータに興味が無いのも事実だろ」
「そうですけど、わざわざ吹聴する必要は?」
「お前に男が出来て、家に寄れなくなるのは不便だからね」
「貴方って人は…」
絡んだ指が少しだけ握り込まれた。どうやら手を繋いだまま歩く気らしい。
彼は効率厨だから、こうしてナマエから男の影を消すと都合が良いことに気が付いてしまったのだろう。全く、迷惑な話だ。
▽
適当に買い物を済ませ、当然のようにナマエの家で荷物整理をするサタナキアは、自身の耳に触れた。少し触って、指が離れる。
そこにはいつも通り、金に光る小さな丸ピアスが収まっていた。
「やっぱりピアスがあるとしっくり来ますね」
「そうだね。そこに関しては同意するよ」
率直な感想を述べるナマエに、サタナキアは少し思案した顔を向ける。
そして何故かサタナキアはナマエの耳に手を伸ばした。
そのまま長い指が何度も耳をなぞって、形を確かめるような動きをする。此方は困惑しかない。困って見上げれば、緑の目がじっと此方を見下ろしている。
「え、ええっと…なんですか…?」
「大丈夫。多分そこまで痛くないから」
「えっ、え、なに、ちょ、」
ばつん!
聞きたくない音が右耳から聞こえた。
「いッッッッたあ!?」
「耳に穴を開けられたくらいで何を今更。腹に穴を開けてやった時は、あんなに静かだったのに」
「開けたんですか!?」
「開けたけど、閉じたから良いだろ」
「そうですね!お腹は閉じれますけど、耳たぶの穴は閉じないんですよ!?」
「俺が言うのもなんだけど…お前、結構変わってるよね」
呆れた顔がナマエを見下ろす。
呆れたいのはこっちである。全くナマエの意思とか気にせず、なんの許可も取らずに耳に穴を開けやがった。思わず心の声が荒れてしまうほど、ナマエは驚いている。
何故ピアス穴を開けて来たのか理解に苦しんだのだが、その疑念はすぐに解消される。
「はい、あげる」
「ええっと…なんで…なんでピアス…?」
銀のピアスを差し出された。
サタナキアが使っているものと同じデザインだが、色が違う。
金でも白金色でも無い。銀色のピアスが手の上できらめいた。
「…欲しかったんじゃないの?」
「私が?ピアスを?」
沈黙が流れる。
ナマエは本当に困惑しかなかったのだが、サタナキアの方も少しやってしまったと言った顔をしている。
落ち着いて要素を整理する。ピアス、穴、今日のプルフラス、労い、買い物の誘い。
…自惚だったら恥ずかしいのだが、サタナキアはもしかして、ナマエへの労いのつもりでピアスを購入し、勝手に穴を開けたのだろうか。
ナマエがサタナキアのピアスを褒めたから、そうなったのだろうか。
ナマエはつい、笑ってしまう。不満気にサタナキアは此方を見るが、だって、笑うしかないだろう。
ナマエが褒めたのはピアスが似合うサタナキアのことで、ピアス自体を褒めたわけではないのに。
「嬉しいです。でも、私が褒めたのはピアスじゃなくて、サタナキアさんの外見ですよ」
「わざわざ言わなくてもいいよ」
これは確実に照れ隠しである。
自分の勘違いや、図星を突かれた時、サタナキアはこういう風に皮肉を言うか、別の論点にすり替えようとする。
案外かわいい男であるというのは何度も言っている。
大きな溜息を吐いたサタナキアは、ナマエの手にピアスを握らせた。
金属は金属でも、少しだけシャープな印象のシルバーが控えめに輝く。おかげさまで死んだ肌色をしているナマエは、金よりプラチナより、この色が一番よく似合うだろうと思う。
サタナキアはやはり身なりに結構気を遣っているタイプであると再確認した。
「はい、じゃあもう片耳も出して」
「サ、サタナキアさんが開けるんですか?」
「そうだけど」
「む、無理、むりです、サタナキアさんお医者さんでも何でもないのに!」
「縫合はしたことあるよ。メギドの」
「絶対それ死んでますよね!?てゆうか、人に穴開けられるの怖すぎますから!」
「それなら自分で開ける?お前、そういうの得意だったっけ?」
「苦手ですけど!」
「じゃあ大人しくしててね。手元狂うから」
なかなか来ない衝撃に、薄らに目を開ければ、サタナキアは此方をじっと見ていた。
耳を押さえてない方の手が頬をさわさわと撫でる。親指が唇に触れ、やんわりと押した。
どことなくいやらしい雰囲気に、ナマエは心臓が落ち着かないのを感じる。そのままゆっくりとサタナキアの顔が近付いて、えっ、うそ、もしかしてキ
ばっつん。