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おまけSS

▽過保護

「損傷は無い?裂傷は?擦傷は?打撲は?」

「問題ありません。サタナキアさんこそ、大丈夫ですか?」

「俺があの程度で怪我すると思う?」

「思いませんね」

「でもキミたちヴィータは傷一つで重篤な感染症になったりするからね。損傷があれば、必ず俺に報告して。いいね」

「はい…って、なんで捲ってるんですか」

「なんでって…お前、鈍いだろ。お前の自己申告は当てにならない。後で細部もチェックするからね」

「ええ…まあ良いですけど…」

「ねえソロモン…あたしが口を出すことじゃないけれど…サタナキアとナマエ、だいぶ爛れてない?」

「そうか?前からあんな感じだったと思うけど…ウェパルは一度生まれ変わったから、感覚が変わったのかもな」

「絶対おかしいわよ!」

 

▽そういうこと

「やあナマエ。今日はサタナキアと一緒じゃないんだね。良かったらお酒でも…」

「ごめんなさいバルバトスさん。お酒は禁止されてるんです。だけど、お茶だったら喜んで」

「おっと。そうなのかい?
ん?…禁止されてる?それは…医者に?」

「違いますよ。サタナキアさんにです」

「…それって、完全な禁酒?」

「管理者の目が届く所…サタナキアさんが居る場所でなら、飲酒が許可されていますね」

「なんていうか…うん。キミたち、俺が思ってたより全然仲が良いんだね…」

 

▽人権無し

「ナマエ。顔を上げて、よく見せて…そのまま目を閉じて欲しいな」

「…オレイさん。サタナキアさんの顔で遊ばないでください」

「おっと!これは驚いた。変装は完璧だったんだけど…どこで気付いたんだい?」

「サタナキアさんは基本的に言い切りの命令形で話しますよ」

「…」

「そうですね…例えば先程の提案なら、“顔を上げて、よく見せて”までは良いんですが、“目を閉じて”って言いますね。
オレイさんのは、ちょっと優しすぎっていうか…わたしの人権を認めすぎではないですか?」

「サタナキア…」

 

▽うっかり

「サタナキア、キミ好きな女の子にそんな態度で良いのかい?」

「アイツは俺のモルモットなんだから、どう扱ったって自由だろ」

「ふうん。好きなのは否定しないんだ?」

「…ヴィータの中では好ましい部類というだけさ。第一、俺はメギドだよ。下等生物に情愛を覚えるなんて馬鹿馬鹿しい」

「私は好きな女の子って言っただけで、情愛とまで言ってないんだけどね」

「…」

「アハハ!ホントに好きなんだ?へえ〜?」

「好意の定義が生殖欲求とするなら、それは違うと答えられるね。俺は一言も彼女が好きだとは言っていないだろ」

「ふうん?じゃあ、ナマエに手を出しても良いのかい?」

「好きにすれば良いよ。俺の不都合にならないなら、アイツがどうなったところで関係が無い」

「…なんていうか、もうちょっと彼女に優しくしてあげたらどうかな?」

 

▽最悪

「オレイさん…サタナキアさんを揶揄わないでくれます?不機嫌になるんですよ」

「おっと。それは悪いことをしたね。だけれど、サタナキアがキミへの態度を改めないから…」

「わたしがこれで良いと思ってるので、余計なことはしないで結構です。プルフラスさんにも言いましたけど、あくまで利害関係ですからね」

「利益があったとは初耳だ。何か貰ってるの?」

「物ではなくって、肉体のメンテナンスですよ。改造されちゃいましたから、サタナキアさんが様子を見る義務があるとかなんとか」

「…キミってなんていうか…それって、利益じゃなくて…」

「損失スタートですって?」

「ハハ!キミは狡猾で聡明なのに、男の趣味だけは愚かとしか言いようがないな!」

「爽やかに悪口言わないでくださいよ…でもね、本当に利点があるんですよ」

「なんだい、それは。全く思い付かないな」

「モルモットで在る限り、サタナキアさんはわたしを側に置くでしょう。それが当然とも主張します」

「…」

「“アシュレイ”はサタナキアさんにとって最初の友人だったけれど…わたしは彼を選び続けてあげられる。
それは、わたしだけが与えられた特権ではないですか?」

「…驚いたな。私が思うより、君はずっと強かな女性だ。
アイツを赦す聖母のように思っていたけれど…君を表す言葉は、毒婦が相応しいのかもね」

「あはは、褒め言葉として受け取っておきますよ」

▽酷い

「ナマエ。おいで」

「は〜い?って、どうしたんですか!?急に何を!?」

「何って、お前を抱き締めてるだけだよ」

「いやいやいや、どういうことですか!?」

「どう?心拍は上がる?今の感情は?」

「え、ええ…えええ…う、うーん…正直驚きでなんとも…」

「そう。じゃあ、大きく息を吸って」

「…思ったより甘い香りがします」

「そう?俺は自分じゃ分からないから…お前は薬品臭いね」

「サタナキアさんが薬品棚の掃除を言い付けたからですよ…」

「それで、心拍数は?俺に抱き締められた感想は?」

「あの、急にどうしたんですか?実験にしては、方向性がスイーツ過ぎると言いますか…
まさか、抱き締めた時にのみ散布される毒の開発をしているとかじゃないですよね!?」

「そんなもの、お前に使ってなんのメリットがあるの?」

「そうですね…」

「単に俺は、お前が万が一にでもオレイに好意を持たないように…」

「え?」

「…」

「わたしがオレイさんを?」

「…お前が俺以外に愛着を持つのは、実験に支障が出る。お前には今後共に任せたい役割があるからね。分かった?」

「愛着も何も、わたしがオレイさんを好きになるとか、ナイナイ!サタナキアさんがわたしに愛着があることくらい無いですよ!」

「…」

「サタナキアさん?サタナキアさーん!?どうして締め上げてるんですか!?サタナキアさーん!?」

 

▽パイセンと後輩

「後輩に人生相談をするのは非常に癪ですが…研究室を締め出されてしまったので、助力をお願いしたいです」

「僕もシャックスも不適任だと思うけど…」

「でもマルマル、聞いてあげるんだネ!」

「では早速…わたしなんで締め出されたんですか!?」

「なんでって、そりゃあ…」

「答えづらい内容なんですか!?」

「キアキアはパイセンのことがとっても大好きなんだけど、素直に言えないんだネ!
そんでパイセンは鈍いから、モメルモメル!」

「驚いた。シャックスお前、ナマエ先輩がなんで怒られたか分かるのか」

「そうだねー。キアキアはとっても合理的で、戦争至上主義こそ持たないものの、結果主義でロジカルな考え方だけ見れば、とっても“最近のメギドらしいメギド“だよネ。
パイセンっていう、幻獣以下の下等生物に肩入れしていることが受け入れ難い…ううん、受け入れてはいるけれど、いざ他者や本人に認識されると、プライドが高くて否定してしまうのだ〜」

「うわ!急に知性的になるなよ!」

「さらっと下等生物って言われましたね」

「パイセンは知ってると思うけど、キアキアはモンモンにもやさしいのだ!」

「確かに。サタナキアさんはソロモンさんに優しいですよね」

「モンモンが責められてると、キアキアいっつも遠回しにフォローをしてるしてる!そんなの、合理的じゃナイナイ!だって、”間違ってるのは事実“なんだモン!
これはあたしの想像だけど…パイセンの悪口をキアキアに言ったら…て、あれ?なんのハナシハナシ?オヤツオヤツ?」

「良いとこで戻るなよな…」

「シャックスさん、ありがとうございました。みんなでおやつでも食べましょうか」

「食べる食べるー!」

 

▽パイセンとキアキア

「パイセンパイセン、パイセンてば汚れたフォトン袋の癖に、どして居るの?
ここはメギドのアジトだよ?どしてどして?」

「えっと…」

「ナマエ。何絡まれてるの」

「あー!キアキア!
ねー、どしてパイセンを軍団に引き入れたの?パイセンはヴィータで、フォトン袋にも成れない欠陥ヴィータだよねだよね?」

「随分ナマエに突っかかるじゃないか。君たち仲良いんじゃ無かったの?」

「ちょっと色々ありまして…」

「ねね、なんでなんで?パイセン、アジトに要らないよね?欠陥フォトン袋なんて、要らない要らない!」

「君は知り得ないことだけれど、ナマエは俺の研究材料として役目を果たしている。
それに素材としてだけでなく、アジトの掃除や備品補充、雑用なんかもしているのは君も知っているところだろう?」

「ほほー?」

「軍団のパーツとして、最低限の務めはしているということだよ。分かったかな」

「うん!わかったわかった!キアキアやっぱりパイセンのことダイスキ!
想像通りだね!パイセンのことも、モンモンと同じくらい庇う庇う!」

「…」

「さ、サタナキアさん…無言でわたしを見下ろすのは非常に圧があると言いますか…」

 

▽パパナキア

「そういえば、ナマエとサタナキアはヴィータで言う恋人ってヤツなんだろ?バナルマの…子供とか出来ないの?」

「プルフラスさん何を仰っているのですか!?」

「え?だって、コイビトって、子供が出来るんでしょ?僕はどうやって出来るのか分かんないけど、ナマエの赤ちゃんは見てみたいなあ〜!」

「別にわたしとサタナキアさんは恋人という訳では…それに、赤ちゃんはそんなポンポン出来るものではないのですよ」

「そうなの?メギドみたいに、こう、気付いたらポーン!って出来るんじゃないんだ」

「ええーっと、うーん…ソロモンさんに聞いてみてください。赤ちゃんの作り方。サタナキアさんは嘘を教えますから、聞いちゃダメですよ」

「?サタナキアは本当のことを話さないけど、嘘
もあんまり言わないと思うよ」

「いーえ、だめです。絶対ダメ。生々しいウソを言いますから、だめです」

「そう?そういうなら聞かないけど…あ!でもさ、サタナキアってさ、案外子供の面倒しっかり見そうだよね」

「えっ!?…考えても見ませんでしたが、それは確かに…」

「ボクもバナルマの頃、結構遊んでもらったしね。渋々だったけど、案外あいつ真面目に遊んでくれるんだ」

「サタナキアさんって、意外とそういうタイプですよね。子供が居たら確かに、熱心に成長記録とか付けるタイプに見えます」

「仕方がないから〜とか言って、最善の育児を追求してる内に手段と目的がすり替わってそうだよね!」

「アハハ、本当にありそうです!わたしもサタナキアさんの育児、見てみたくなっちゃ」

「ナマエ」

「ヒッ」

「あっ、サタナキア!ねえねえ、ナマエの赤ちゃん見たいよね!ナマエも、育児するサタナキア見たいって!」

「プルフラスさん!?」

「プルフラス。いいかい、バナルマのヴィータはね…」

「サタナキアさん!!!!!!」

「コウノトリが運んで来るんだよ。だから、そんなにすぐ発生するものじゃないんだ」

「サタナキアさん…!」

 

▽ログボネタ

「え?正月には…あけましておめでとうって言うの?」

「そこに食い付くんですね」

「だって、何に対して祝っているのか不明瞭だろう。対面している相手に向けるなら、“今年も宜しく”だけで十分じゃないか」

「ああ〜。”あけましておめでとう“は人に対してではなく、架空の信仰物…年始に誕生するとされる神に対する挨拶なんですよ」

「そうか!“今年も宜しく”というのもヴィータにではなく、空想に向けて言っているのか!」

「言い方」

▽バレンタイン

「バレンタインにチョコを配るのは、なんの意味があるの?
そう俺は思っていたけれど、ホワイトデーも併せたイベントだと思えば、経済活動として非常に効率の良い催しだと言えるね」

「バレンタイン単体だけだと、女性が消費をして終わりますもんね。ホワイトデーもあることで、男女双方で経済が循環する…よく出来たシステムですよ」

「ところで、お前が俺にチョコレートをくれる理由は?」

「お世話になっておりますの意です」

「そう。お前も経済循環に組み込まれた訳か」

「サタナキアさんこそ、わたしにチョコレートくれるじゃないですか」

「労うと作業効率が上昇するからね」

▽エイプリルフール

「サタナキアさんに嘘を吐こうと思ったんですけど、くだらなすぎて辞めました」

「賢明な判断だね。お前の足りない知能でも、それは理解出来たのか。えらいね」

「と、言いますと?」

「嘘は必要なときにつくものさ。そして…墓場まで持って行くんだ」

「サタナキアさんは、わたしにも嘘を付いていますか?」

「どうだろうね。お前に話していないことはあるけれど…なるべく、嘘は付かないつもりだよ」

「そうですか。それは少し…嬉しいですね」

▽春

「春は新しい生命が誕生する季節。でも、生き残るのは一握りだけさ」

「そうですね。春が来て、季節が巡って、次の春までには沢山淘汰されるものです。
わたしも、サタナキアさんも、揃って次を迎えたいものですね」

「そうだね。俺もそう思うよ」

「…!」

「意外だった?」

「正直」

「…まあ俺も、お前と居るのは…悪くないとは思っているからね」

▽梅雨

「水はすべての命の源だが、同時にすべての命を呑み込む悪魔にもなる」

「水攻めでも考えているんですか?」

「お前は俺をなんだと思っているの?」

▽七夕

「七夕に願う…随分ロマンチックだね。一種のアニミズムなのかな」

「サタナキアさんにもロマンチックなどと言う感性があったんですね」

「俺自身の体感はし難い項目だけど、概要は理解出来るさ。ヴィータの定義は曖昧な物ばかりだけれど、言語化し辛い現象や症状を示す語彙が発達しているのは好ましいね」

「ロマンチックのカケラも無い!
もっとこう…離れ離れの二人が会えて素敵だね♡みたいなのは無いんですか!?」

「そうだな…費用対効果は凄く良いと思ったよ。一年に一度会うだけで心を繋ぎ止められて、残りの364日を労働させられるんだろ。
具体的な方法があれば、俺も聞きたいところだよ」

「ロマンチックのカケラも無い!!!!…って、何に使うんですかそのノウハウ」

「お前」

「わたし」

▽夏

「心頭滅却なんてのは嘘っぱちさ。精神論で語るのは好きじゃないんだ」

「サタナキアさん、意外と暑いの嫌いですものね。夏は特に、イライラしやすいように感じます」

「当たり前だろ。肉体のコンディションが狂えば、万全のパフォーマンスが発揮出来ないのも当たり前さ。
効率が下がることは好ましくないからね。機嫌の低下も自然なことだよ」

「なんか今、八つ当たりを正当化されたような…?」

▽秋

「命の集大成がこの季節にあるんだ。多くの者はそれに気付けないけどね」

「そうですね。秋はシャケに、きのこに、かぼちゃに…」

「お前、生物学を学んでいたと記憶しているんだけど。それでその浅い感想が出るの?」

「わたしは生物学を専攻して居ましたが、この分野の知識があるだけで個人的な見解や自論はないんですよ」

「お前…呆れて言葉も出ないよ」

▽ハロウィン

「ハロウィンがなんの日なのか、俺には理解できない…」

「ハロウィンは死者を迎え入れて、新しい年を祝うお祭りですよ。正月とお盆が一緒に来ているんです」

「それなら“あけましておめでとう”じゃないの?」

「ところがですね、あけましておめでとうと、ハッピーハローウィーンは文化圏が違うんです!二つの祭日は混じり合わないんですよね」

「非効率的だね。いや、休日を増やし英気を養う合同日を作るという点では、合理的と言えるのかも」

「ハロウィンは国民の休日じゃないんですよ」

「やはりハロウィンがなんの日なのか、俺には理解できない」

▽クリスマス

「クリスマスってなに?赤いおじさんが来る日?なにそれ」

「聖人の生誕を祝う祭事が、長い時を経て形が変わったイベントなんですよ」

「ヴァイガルドはそんな物ばかりだね。ハロウィンもそうじゃないか」

「過酷な一生を乗り越えるのに、一年に一度の祝日じゃ楽しみがありませんから。
騒げる時に騒いで、日々の苦悩を忘れる…そんな日が多ければ多いほど、生きる活力になるでしょう?」

「…お前、本当は民俗学を学んできたの?」

「そ、そんなことは…」

▽年末

「今年ももう終わりだし」

「一年の反省会をしましょう!」

「サタナキア、ナマエ、突然どうしたんだ!?」

「ソロモン。君の計画は概ね成功だったと言えるけれど、最善であったとは言い切れない。そこで、俺と一年の振り返りをする事で…来年は今年度よりも効率良く生産活動をしよう」

「はい、ソロモンさん。こちら資料になります。議題に合わせて、一枚ずつ頁を捲ってくださいね」

「えっ、えっ…ええ…」

「サタナキアさんとの反省会が終わったら、わたしからの報告にもお時間をくださいね。アジトの物品補充について、ご提案があります」

「来年にしてくれ!」

▽そういえば

「そういえば、シャックスはナマエと居ると饒舌だよな。
やっぱり、先輩の前だと気が引き締まるのか?」

「違うよ」

「うわ!サタナキア!」

「ナマエは発電出来るだろ。
あれは、メギドラルに自生する意志を持った菌糸類が臓器に巣食っているからなんだ」

(すごいこと言ってるんだけど…!?)

「それがたまたま、シャックスの身体に合っているみたいでね。
まあ、ナマエから引き剥がす訳にもいかないから、一時的なものに過ぎないんだけど」

▽たのしい遠征

「えっ!今回の遠征、ナマエも付いてくるの!?」

「宜しくお願いします、ソロモンさん!」

「アーライ達と同じで、コイツはメギドにとって取るに足らない存在の筈だ。切り離して伝令役にするには、丁度良い駒だと思うよ」

「でも、サタナキア…ナマエはヴィータだし、それに…」

「だから良いって言ってるんだよ。死んだ時に一番損失も少ない。
有能なメギドを伝令役として使って、ロストした時の戦略的マイナスをよく考えてみなよ」

「俺が言ってるのはそういうことじゃなくて…」

「?どういうことですか。何か、不都合が…?」

「…」

(サタナキアは分かってるみたいだけど、ナマエは分からないって顔だ!)

「あんな砲撃…当たったら私は即死では無いですか?」

「そうだね。だからお前、俺の方来たんだろ」

「まあ…そうですが」

「よしよし。お前はバカだけど、利口だね。ソロモンの側…いや、俺と行動する事が、一番低リスクだと知ってるわけだから」

「バカ…」

「下等生物でありながら、好んでメギドと連むなんて…バカ以外の何者でも無いと思うけど?」

「はい…」

「まあ、保身を最優先にするのは都合が良いけどね。お前が死んだら、雑用係が居なくなるから」

「…ああ!」

「…なに?急に大声を出さないでくれ」

「すみません。でも、さっきの。どういうことか分かったので…」

(今更かよという周りのメギドの視線)

「ああ、そう」

「もしかしてなんですけど、サタナキアさんって…思ったよりわたしを大切にしてるんですね!?」

「…」

「そういえば遠征に行くって話の際、元々アジト待機でしたもんね!?
でも結局、“伝令役の幻獣が用意出来なかったから、リスクあるけど良い?”って言ってましたね!」

(そうなんだ…という周りのメギドの生暖かい視線)

「…お前、本当に口が減らないね」

「お前、近くないか?」

「そうですか?」

「そうだよ。邪魔だから、もっと離れて」

(あんたたちは普段から近いだろ…という周りのメギドの視線)

「それは無理です」

「なんで?」

「わたしがメギドラルの側だったら、周りが見えて居そうな人から一人ずつ始末します。
というか案外、もう他の部隊でやってるのではないですか?」

(イチャイチャしたいだけじゃなかったのか…!という周りのメギドの視線)

「…(案外的を得ているかもしれないという顔)」

「サタナキアさんが作戦を練ってる以上、用心に越したことはないですよね。こんなところで瓦解したくないですから」

「結論から言えば、その可能性も無くはない。
俺たちのグループが襲われる可能性は限りなく無いと思うけど」

「何故ですか?」

「考えてもみなよ。此処にはソロモンが居るだろ」

「…ああ!そういえばそうですね!」

「お前ね…少し見直したけど、やっぱりバカだな」

「本来の肉体に存在しない部位を付けるのは、耐え難い拷問…?」

「そうだよ。おまえ普通に耐えてるけど、よく正気で居られるよね」

「付けた本人が何を…」

「ナマエ。全員がメギド体になる前に、この場所から離れるんだ。
もしもソロモンが負けたら、まあ…歩いてゲートまで帰ることをオススメするよ。お前はただのヴィータだし、殲滅対象になるような存在ではないからね」

「はあ」

「返事は?」

「嫌ですけど…」

「はあ?」

「ソロモンさんが負けたら、ヴァイガルドは終わるんですよ。それなら、何処で死んでも同じです」

「極論だけど、まあそうだね」

「どうせ死ぬなら、貴方のお友達として…最後の瞬間まで、同じ時を過ごしたいと思いませんか?」

「…ああ、そう。好きにしなよ」

「無駄死にだとは言わないんですね」

「俺が死ねば、お前も順当に死ぬからね。
懸念を残さなくて良いと考えるなら、悪い案じゃ無いと思っただけさ」

「んふふ。私たち…ズッ友ですよ!」

「アンドレアルフス、お茶」

「ほらよ」

「ん」

「その手はなんだ、サタナキア。俺はおまえさんに茶を渡した筈だが…茶菓子も必要だったか?」

「…そうだね。チョコレートを貰っていい?なるべく、甘いヤツの方が良いね」

「…?あ、ああ…」

「解説しようしよう!キアキアはね、つい普段のクセで手を出しちゃったのだ!」

「余計なこと言わなくていいよ」

「いつもはパイセンにお茶淹れて貰ってるよネ!パイセンはぜったい、キアキアにあま〜いお菓子をくれるくれる!
たまに、そのまま食べさせて貰ったりして…フギュ」

「はあ〜!羨ましいぜサタナキアは!俺は奥さんにも愛しのアリシアちゃんにも、家帰らねえと会えねえって言うのに!」

「…」

「イタイイタイ!ほっぺ千切れちゃう!」

「キアキアすっごい機嫌悪そう!」

「シャックスが余計なこと言うからだろ…」

「言う前から不機嫌だったよ。あたしは関係ないない!
…あれれ、でもでもなんで、不機嫌なの?」

「そりゃそうだろ。メギドでさえ誰が死ぬか分かんないんだ。ただのヴィータのナマエさんを最前線に置いて来たらああもなるって。
…僕だって、少し心配だし。ナマエさん、運が無いだろ」

「アハハ!確かに確かに!あたしたちと…キアキアに会っちゃって、運がナイナイ!」

「お前な…」

▽おまえんちメギドの溜まり場

「皆アジトで拘束されてるのに、キミはフリーなんだね?」

「わたしはメギドではないですからね。ソロモンさんも、女王様に申告して居なかったんでしょう」

「サタナキアも進言しなかったってことは…いずれこうなるかもと思って、王国の視察から君を隠してたわけか」

「その結果、オレイさんがうちに転がり込んだのは想定外ですが…」

「いいじゃないか!私はその気になれば、いつだって姿を眩ませられるし。ただ、サタナキアが上手いこと逃げられるなら…なるべく早く合流したいってだけさ」

「丁度いい中継地ですもんね、わたしの家…」

「アイツ、帰って来たらどんな顔するかな。どうせ来るだろうから、驚かせてやりたいところだが…」

「あんまりサタナキアさんを揶揄って遊ばないでくださいよ」

▽たのしいペリビット

「うーん…」

「浮かない顔ね。ナマエにペリビットで勝ったんじゃないの」

「勝ったには勝ったんだけど…ウェパルもこれ、見てくれよ」

「…?」

「5戦やって、3勝2敗で俺の勝ちなんだけどさ、これが俺の得点で、あっちがナマエの得点で…」

「…!これは…勝てた気にならないわね」

「だろ?ナマエが勝った時は圧倒的に点差を付けられたけど、俺が勝った時は最低限…1点差、しかも大した点を取れずに勝ってるんだ」

「…サタナキアもそうだけど、損切りが上手いのね。純粋なヴィータなのに…」

「うわ!サタナキア、ナマエ、何してるんだ!」

「やあソロモン。何って、見たら分からない?」

「ご覧の通りですが…」

「わかるけど、わからない!」

「ペリビットの上手なやり方を模索してるんだ。遊びとはいえ、勝てるに越したことは無いだろ」

「そうだけど、そんなに分析するようなゲームだったかな!?」

「でもソロモンさん、このゲームに意味がありそうって仰ってましたよね」

「う、うん…」

「わたしも同意見なんです。なにか、こう、なんか…ありそうです。それ以上分かりませんが」

「それでナマエと分担して、何度も対戦しているって訳さ。
俺は正直、意味も意図も分からないけどね。まあ、ソロモンと…コイツが揃って言うなら、一考の価値があるかもしれない」

「そ、そんな途方もない作業を…二人で?」

「本当はプルフラスさんとオレイさんも居たのですが、逃げてしまいました」

(だろうなあという顔)