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始まりの彼女は世界を嘆く
だって彼はそこに居なかったのだから

京楽が友人を紹介してくれるのだという。
ヒゲモジャロング…ではなく、控えめな髭に若者らしい短髪。彼は大成するとナマエは知っている。

「前に大型ホロウが出たでしょ、あの時ナマエちゃんに助けてもらったんだって」

へえ、と生返事を寄越すが、その虚を未来から持ち込んだのは自分だったのだよな、と頭が痛くなってくる。
過去と未来は結び付き、大抵の悪いことは結構な頻度で己の所為であった。反省が必要である。
指の中でクルクルと短剣を回せば、少し驚いた顔の京楽がじっと見つめてくる。なんだ、と返せば不思議そうに彼は呟いた。

「ナマエちゃんいつのまに始解を?」

「まあ、ちょっとね」

ふうん、と彼は少し訝しげであったけれど、もっと重要なことが有ると一旦置くことにしたらしい。
そうそうこいつこいつ。紹介するよ。春水はそう言って、男を指差す。知らないのに知っている。記憶のものより随分と幼く映るが、ナマエは彼を知っている。

未来の彼よりも、少し落ち着きが無さそうだ。若いってすごいな、とまじまじ見る。
彼が少しだけ困ったように視線を彷徨わせたけれど、ナマエは大変ずるいことに彼の気持ちを知ってしまっている。きっと言われなければわからなかったが、正直者の彼のせいで知ってしまっているのだ。
そしてナマエの態度が彼を困らせているのも分かってしまったので、右手を差し出す。

「私は、ナマエ」

にこやかに微笑んで手を握れば、これからの先が見えてしまった。とても優しそうで穏やかそうなヒト。

ナマエは数度瞬きをして、記憶のものよりもずっと若い顔を見やって、笑った。
ああ。私の運命は、ここから始まっていたのだ、と。